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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-15 [Thu]
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2008-09-04 [Thu]
 らんらんらん、るんるんるん。世界って何て楽しいんだろう。らんらんらん、るんるんるん、うふふ、うふふ。楽しいなぁ、楽しいなぁ。今日は部屋でゆっくり遊ぼうか、明日は外に出てみようか、明後日は……もう先はなさそうだから考えないでいいや。
 もうすぐ私の世界は終わって、私ではない私の世界が始まっていく。人間を超越して生まれ変われるこの体の事を考えるとひどく幸せになれた。
「そんなに幸せになれるものなの」
 一週間ぶりに訪ねて来た彼女がそんな事を言い出した。この子はまだニアデスハピネス期には到達しておらず、やがて来るであろう一時的な死を恐れながら、死ぬ事も出来ずに残された日々を生きている。
「すごくね、幸せ。死ぬのにね、幸せなんだよ」
「……死んだらその先になにもないじゃない」
「違うんだ、アンタもそのうち解るよ。死んで生き返って、またぐちゃぐちゃに殺されて死ぬ。本当は先生に殺してほしかったんだけどもう無理だしね」
 窓枠に外を向いて座った彼女の爪先に引っかけていた草履がころんと地面に落ちた。私の好きな人は、学校で初めてこの騒ぎか起きた次の日、慣れ親しんだこの街からたった一人、愛しい女の子の手を引いて姿を消した。選んで貰えなかったのはすごく悲しかったけど、どうしようもないことはわかっている。
「まだ和服なんだね」
 いなくなってしまったあの人と同じような格好をするなんて、今の私ならそれだけで幸せになれるけど。
「私は最後まであの人と一緒だもの」
「あはは、泣きそうだよまといちゃん? でもいつか全部全部幸せに思える日が来るから大丈夫なんだよ、私ここにいるだけで幸せになれるもん」
「……バカじゃないの……」
 馬鹿かもしれない。けど私は確かに幸せなんだ。今はいなくなったあの人に殺されるあの子の事を考えると、少しだけ悲しくなるんだけど。
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