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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-15 [Thu]
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2008-09-11 [Thu]
ほら、と彼は自分の腕を臆しもせずもぎ取った。外した、と言った方が正しいのか。彼はその左腕を私に向けるので思わずまだ体温の残るそれを受け取ってしまった。
穴が開く程じっくりと眺めてみたが、それは確かに彼の腕だった。病的に白い色も僅かな綻びも許さない美しい肌も造り物のようだったが、間違いなく生きている人間の物だ。
「巧いものだね」
まるで機械のように鉄に覆われた接合部を指で辿りながら言うと、彼はいつもとは違い、やんわりと微笑んだ。
「ええ、義骸にも応用してるんですよこれ。今だったらもっと綺麗に造れるんですけどね」
「これでもまだ未完成だとでも言うのかい?」
「そうですね……外して三日で限界が来ますから。それ以上外しておくと腐っちゃうんですそれ。でも今の技術なら永久的に外しても大丈夫なように出来るんすよ」
そう言いながら彼は次々に自分の身体を外していく。まるで簡単な機械でも分解するかのような手際の良さで、右足、左足と身体から失われる。やがて胴体には右腕と首だけが取り残され、座っていたはずの彼はぱたりと倒れた。
「上手く立てないのが難点ですかねぇ」
それ、もっと細かく出来ますから。そんな事を口にしながら転がった右足に手を伸ばそうとする。私は右足を掠め取ると、彼の手の届かない所へと放り投げた。
「ちょ、戻れないじゃないっすか」
「関係ない」
軽くなってしまった彼の身体を起こしてそのまま抱き抱えた。彼は落ちないようにと必死で残った右腕を私の背中に絡めて来る。このまま行為に及んでも楽しいかもしれないなんて、私も大概狂っている。
「返さなきゃ駄目かい?身体を」
君の身体ならば腐ってもなお愛せる。
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