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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-15 [Thu]
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2008-09-12 [Fri]
さよなら、さよなら、夕焼けの公園で少女は笑った。夕日を背にして立つ僕の向かい側で、最後の微笑みを浮かべながら小さな声で何かを歌う。
ミルクとコーヒー、カップをカチャリ、ターンしてダンス。まるで何かの小説のようだった。
「お別れ、ですね」
震える声でそれだけ言うのがやっとだった。彼女の前ではもう何度も泣いていると言うのに最後の涙は流してはいけない気がして、私はぐっと唇を噛んで耐える。微笑む少女の顔を真っ赤に夕陽が照らし出す。少女からは逆光となり、私の表情が見えないのがせめてもの救いだった。
「お別れなんかじゃありません。私達は確かに一度離れますが、もう一度逢えるんですよ?それで悲しみなんか全部チャラです」
そして少女はまた笑う。あの日その小さな手を握って街を飛び出してからもう半年が過ぎ去ろうとしていた。逃げ出したはずの運命は容赦なく彼女を襲い、すべてを飲み込んで無に還そうとする。
「先生、先生、笑ってください笑って笑って?あははははは、どうして悲しむことがあるんですかふふふふもう一度逢えるんですよ私達あはははははは」
あはははは、ははは、ふふふ。笑いながら彼女の身体はゆっくりと崩れ落ちていく。華奢な背中が地面に吸い込まれた瞬間、ピタリと笑い声が止み、彼女の最初の命がそこで途切れたのだと私は悟った。まだ温もりが残る身体を抱き抱えればやたらと軽く、まるで魂だけ抜けて眠りに落ちた人間のようだった。
人間、だった。
「もう一度、逢えたらチャラですよね、悲しみも、痛みも、全部」
人間の貴女とはもう二度と逢えないけれど、それでも。手にとったライダーマンの右手がうねりをあげる。横たわる少女の眼が見開かれた瞬間、私はその首に刃を振り下ろした。
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