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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-15 [Thu]
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2008-09-12 [Fri]
兄貴と俺は似ていない。俗にいう二卵性の双子なので瓜二つではないのは当たり前だ。ただそうではない、本当に兄弟か疑われるくらいに似ていないのだ。
それは生まれた瞬間から始まっていて、俺は世にも珍しいオレンジの頭、兄貴は見る者を惑わすような月色の髪を持っていた。小さな頃は色だけだったが、成長するにつれて顔立ちや体格なんかも違いがはっきりして来て、いつまでも年相応に子供っぽい凡庸な俺と実年齢以上に大人びて見える天才の兄貴との間には、いつのまにか大きな溝が出来てしまっていた。
どこぞやの少女漫画のような昼メロ的過去を疑ってみた時期もあったが、それはただの杞憂なのだとDNAが物語る。不安に思った親父が俺達を調べてからもう三年は経ったはずだ。
けれど生まれてしまったものはどうしようもなく、俺達はぎこちないまま同じ大学へと進学した。
家を出るにあたってせめて部屋は別にしてほしかったが、そういうわけにもいかないのだろう。
兄貴がわざと第一志望に落ちて俺と同じ大学に来たことなんてとっくに知ってる。兄貴はそういう男だ。誰よりも頭が良くて、器用で、生きて行くのに必要な物を全部兼ね揃えているのに完璧には似つかわないような物に執着する。俺は兄貴のそういう所が大嫌いだ。
「またかよ……」
嫌味か?嫌味なのか?扉の向こうで固いチェーンが俺の侵入を拒んでいる。兄貴が女を連れ込む際の取り決めの一つだ。何だよ俺帰って来たのにどーすんだよめんどくせぇじゃねーかメールしろよ馬鹿。
仕方なく近場のチャドにでもメールしようと携帯を取り出したが何だか妙にだるくて、壁を背にコンクリートに座り込んだ。身体中がひんやりして気持ちが悪い。
「……つまんねぇの」
鞄に携帯をしまい込むと、膝を立て踞った。何がつまらないのかとかもうどうでもよくて、あの教授の授業がわけわかんねーとかバイト先の店長ムカつくとか、本当にどうでもいい事ばかり考えていると少しずつ瞼が重くなって来て、扉が開くような音が聞こえて。
それから先は、覚えていない。





「あら」
「うぉ」
何で眼の前にコイツがいるんだ?つーか俺はいつの間にベッドに入った?夢遊病か?
「何で兄貴横で寝てんだよ」
「あら、そんなに嫌な顔しなくっても。昔はよく一緒にお昼寝したじゃないですかぁ」
「馬鹿じゃねぇの?」
「たまにはいいじゃないですかー」
そう言って兄貴は俺の腰に手を絡めてくる。え、変態?何て言うかウザいこの人。
「放せ馬鹿兄貴!」
「一護さんてばヒドイっ、アタシだって人肌が恋しくなる時があるんですー」
俺の知らない誰かと愛し合って間もないのに?兄貴はいつも俺を馬鹿にする。すねた振りをして兄貴に背中を向けた。俺だってもう子供じゃないし、それに兄貴の事は、全部、知って。
「一人で寝るのって、寂しいじゃないですか、独りなんて」
嘘つき、うそつき。いつもいつも独りになろうとする癖に。兄貴が女なんて連れ込んでない事はとっくに気付いていた。誰かを愛す振りをして俺を遠ざけて、ただ深い闇の中でひっそりと孤独を愛しているのだ。
「やっぱりね、一護が一番落ち付くんだ」
そう呟きながら俺を抱き締める兄貴は、きっと誰にも見せた事のないくらい穏やかな笑みを浮かべているのだろう。
止めてくれ、放してくれ。俺は兄貴の事なら何だって知ってるんだ、隠してることも全部気付いてるんだ、でも。
一番奥に潜む感情は気付いてはいけないんだ。
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