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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-15 [Thu]
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2008-09-25 [Thu]
うふふ、うふふ、その少女は男を取り囲んでふわふわと笑った。くるり、くるり、ふわふわり。正反対の表情を浮かべた少女達はどこか楽しそうに見える。
くるり、くるり、黒い髪の少女が男の左肩にそっと私の方に手を置いて、耳元にそっと唇を寄せる。
「アンタのせいだよ、分かる?」
その声は男の体を貫くのに十分な冷たさを持っていた。ぴちゃり、と舌の蠢く音が聞こえる。僅かな息づかいに全てが拘束されてしまったようだった。
白いワンピースを見に纏った少女は、ひらひらと裾を靡かせながら男の喉に手を伸ばす。凍りついたままの声帯を握りつぶすように、華奢な白い指を姿に似つかわしくない力でぎりぎりと締め付けてきた。
「幸せだったのに、それだけでよかったのに、どうして」
「アンタが全部ぶち壊した」
「お兄ちゃんを返して」
「アンタのために一兄はいなくなった」
ふわふわ、ふわふわ、ひらり、ひらり。幼い嗚咽に狂った笑い声が絡み付く。もうどちらの少女がどんな表情をしているのかさえ男には分からない。ただ確実な憎悪だけがこの世界を取り巻いていた。
ひらひら、けらけら、アンタなんて、アンタなんて。
死んじゃえばいいのに。
からから、けらけら、そうですねそうですね、死んじゃえばいいのに、そうですよねそうですよね、消えちゃえばいいのに。
死んじゃえばいいのに。
そうですね。
死んじゃえばいいのに。
そうですね。
でも一兄はそんなこと望まないんだ。
ふわり、ふわり、少女は今日も男を取り囲む。その優しげな唇から呪いの歌をこぼしながら。
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