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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2008-11-25 [Tue]
 お帰りなさい、あなた。お疲れでしょう? 早く上がって、ほらコートはこっちにかけておくから早く脱いで。ああ、ご飯ならもう出来てるわよ、お風呂も沸かしてあるけどどっちが先がいい?

 私の準備も出来てるけど、どうする?





「―――という夢を見た」
 珍しく自分から起き出した同居人の朝一番の台詞だった。私は思わずインスタントコーヒーにお湯を注ごうとポットを構えた手を止めて同居人を凝視してしまった。
「……馬鹿?」
「いやあれはちょっと男のロマンというか」
「何言って欲しいの? ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
「まあとりあえずお前を喰うよね」
「もう若くないんだから無理しなくても」
「ていうか俺帰って来ても大体飯出来てないし」
「だって私が作るより美味しいんだもん」
「風呂だって基本シャワーだし」
「それ私に言われても困る」
 年齢不詳の同居人(三十路手前くらいだと推測するが若作りの可能性が高いような気がする)はわざとらしく大きな溜息をついてリビングのソファーにどさりと倒れこんだ。くすんだ白色のそれがぎしりと悲鳴を上げる。私は未だ熱を持ったままのポットから色違いのマグカップにそれぞれお湯を注ぐと、砂糖が切れていることに気が付いて手元の引き出しを開いた。
「夢の中のお前はめっちゃくちゃいい奥さんって感じで」
「人を勝手に嫁にするな」
「すっごい優しくて」
「私の半分は優しさで出来てるはずだけど」
「しかも裸エプロンで」
「うん、もうどうしようもないと思う」
 白のマグカップに砂糖を一杯とミルクをたっぷり、黒い方には何も手を加えずに片手でそれぞれ取っ手を持ってリビングまで持ち運ぶ。寝転がったままの彼をうまく避けるようにソファーに腰を下ろすと、目の前のローテーブルにカップをことりと置いた。
「でも現実は……」
「悪かったな煩悩の塊」
「百八の中の四つって可愛いもんだろ」
「またえらい濃い四つが出て来たものですね」
「今日の夜エプロン着せちゃダメ?」
「丁重にお断りします」
 朝から何なんだろうこの会話。勝手に卑猥な夫婦の営みに巻き込まれた私はいい迷惑だ。道具(まだ使ったことはないけれど引き出しの奥のほうにいっぱい持ってるのを知っている。これからも出て来ないことを切に祈る)もそうだがコスプレやらエプロンやらは勘弁して欲しい。普通の女の子って彼氏の性癖に何処まで対応できるの?
「あれ、お前昔は何されても平気とか言ってなかった?」
「……そういえば。人って変わるもんね」
「うっわ普通になる前に着せとけばよかった」
「死んでしまえ」
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