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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-16 [Fri]
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2008-04-08 [Tue]
 こんなにも素直に泣けたのはいつ以来だろう。お父さんが首を吊るよりももっと前だった気がする。その頃の私はいろんな意味で純粋で、その分ちゃんとした人間だった。いつからこんな風に斜めに尖ってしまったのかなんて知らない。そんな尖ってばかりの私でもちゃんと人を愛せて、ちゃんとその人の為に泣けるのだと知って安心した。
 古びた本の匂いと膝を抱えて俯いた私の頭を撫でる優しい手は全て私が望んだものではなかった。私は望んでいたのはたった一人の腕の中だったのに、それすらも叶わないままで私は隣に座る彼の優しさを受け入れてしまっている。それは悔しいことだけれど、今の私にはそれに抵抗するほどの余裕なんて何処にも無かった。
「先生は」
 彼の手が止まった。
「先生はきっと向こうの世界で幸せになれるんだね」
 彼がこんなに悲しそうな顔をするのは初めて見た。とっくに気づかれているのに慌てて隠そうといつものように笑う姿は何だか滑稽だった。
「そうだね、きっと向こうの世界で生まれ変わって、幸せになるんだよ」
「今度はちゃんとした名前だといいね」
「そうだね」
「またいつか会えるのかな」
「会えるよ」
「ちゃんとお互い分かるのかな」
「きっと分かるよ」
 私が何も言わなくなったので彼ももう何も答えなかった。いつもはとっくにやって来るはずの夕暮れはまだやって来ない。あの人がいなくなった世界は今日も太陽の日差しを受けて宇宙をくるくる回っている。このまま秋になって冬になって春になってまた夏が来てもきっと何も変わらない。窓の外から差し込む光が大粒の雪に見えた。
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2008-04-08 [Tue]
 飛ぶんですかと後ろから声がかかったので振り返って見たら、よく見知った顔によく似たまあ見知った顔がそこにあった。彼は屋上のフェンスで区切られている安全圏内を越えて立っている私をただ見つめているだけで、何故だか知らないけれど私にはそれがとても不愉快に感じられた。
 私は飛びませんと答えただけでそれから彼と話す気はまったくなかった。本当にここから飛ぶ気はない。そんなつもりならためらう事無くここに立って5秒もあれば足をコンクリートから離すことができる。翼のない人間はただ飛んで落ちてこの高さならきっと絶命して終わりだろう。その先は? 死んだその先にはきっとまた違う世界が待っている。この世界がそれなりに気に入っている私にとってまったく興味も縁もないような場所だ。
 ただちょっと気になっただけなんです。何が? この世界を自ら捨てようとするあの人の気持ちが。会話は風に流されて僅かにしか耳に届かない。顔も似てれば声も似ている。私の愛しいあの人によく似ているからだ、だから彼が疎ましくて仕方ない。さっさとここからいなくなっちゃえばいいのに。
 別に死ぬ気は無いと思うよ? 無いでしょうね、あの人に出来る訳無いじゃないですか、そんな事。人間はどんなに頑張っても飛べやしないのに。世界に囲まれた私達は生きていくしかないという事に彼はいつ気づくのだろうか。
2008-04-08 [Tue]
リンクに絶望サイト様2件&別館追加しました。



つ、ついに12巻げっちゅーしました!!!やったこれで全巻そろった!!
久、久藤君何やってんすかぎゃあかっこいい。
カフカちゃんは並木道で先生と二人きり、だったらよかったのになぁ……ちゃんといたねまといちゃん。
それでもこの二人デートしてるんじゃないのとか妄想は膨らみますぐあぁ。


友のサイトでやたらちびっこいのを見かけます。
僕は描けません、ちびっこいの。
人外ならちょっと描けます。
悔しくてひたすらオリゼーを描いたりしてましたよ……
2008-04-05 [Sat]
「神様なんてね、所詮私達を家畜としか思ってないんですよ」
 そんな言葉が彼女の口から出て来るなんて意外だった。将来神になりたいのではなかったのか? ポロロッカ星人は? あれは神ではないのか。もしかして人間を蔑みたいとでもいうのだろうか。
「先生、例えば貴方が羊飼いだとして、私達生徒が羊だと思ってください。大量の羊を人間がまとめるのは大変です。先生は必死なのに私は身勝手にどこかに行ってしまう。なら探しに行きますか? 行かないでしょう。だってまだたくさんの羊達が手元に残っているんです。その子達だって放っておけばどこに行ってしまうか分からないんですから。一匹の為に多くを失うかもしれないリスクなんて背負いたくはないでしょう。つまりはそういう事なんですよ。神様は大勢の人間を導くために、一人を特別に助けたりはしないんです。そういう事なんです。たくさんいる中でたった一人を特別に思ったりはしないんです。ねぇ」
 そうでしょう? とこちらに向けられた眼に、何か奥の方に密んでいる靄ががった物が貫かれた気がした。彼女は教室の一番後ろの窓を開けると、どこか遠くを見るような眼を外に向けた。
「たった一人が特別に思われるような世界なんてどこにも無いんです」
 近くにあった椅子を引き、それを足場にして内側に向いたまま窓枠に腰掛けた。
「危ないですよ」
「大丈夫ですよ」
 私は今にも落ちそうな体勢の彼女に手を差し伸べたが、彼女はそう切り捨てるように言ってその手を取ろうとはしてくれなかった。それでも私は手を差し伸べたまま黙って彼女をまっすぐ見つめていた。やがて彼女はいつものようにくすりと笑うと、私の手を勢いよく叩き落とした。
「一人を特別になんて思っちゃダメなんですよ」
「どうしてですか?」
「その代償に多くを失う可能性があるからです」
「いつからそんな保守的になったんですか?」
「いつからでしょう、前からかもしれません」
 こんな自虐的な彼女を見るのは初めてだ。私は落とされた手をどうすることも出来ず、ただ呆然と彼女を見つめるしかなかった。
 彼女はこちらを見ることも無く、ただ悲しい笑みを顔に貼り付けたまま夕暮れに染まった外の世界を眺めていた。外から吹き込む風が彼女の髪をさらうように揺らし、その表情を隠していく。
「私は」
 彼女はこちらを向かなかった。
「私は貴方を特別だと思ってますよ」
 その時の彼女は確かに笑っていた。わずかに見えた口元が緩く笑みを浮かべている。
 そのまま彼女も何も口に出さなかった。微かに響く、時を刻む秒針の声がやたらと耳に痛く感じる。先程よりも一層茜に染まった空は教室まで飲み込んで私達の世界を奪っていく。
「先生?」
 こちらに向き直ってくれた彼女は、今まで誰にも見せたことの無いような満面の笑みを浮かべていた。
「羊飼いは嘘を付くものですよ」
 そのまま、ゆっくりと、後ろへ倒れこんで行く。まるで演舞でも見ているかのような美しい瞬間だった。
 彼女の姿が世界から消えると同時に窓から伸ばしたこの手を、彼女は。
2008-04-05 [Sat]
今気付きました、リンクミス。

水母様のサイトがちゃんと繋がってませんでしたが修正しました。ごめんなさい。
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