2008-04-16 [Wed]
人を本気で殺してやろうと思ったのはこれが初めてだった。先生は今私の世界の中では最弱最下の底辺にいて、もっと広い世界を見る事すら望まずにただ自分の世界を閉じる事だけを考えているとても悲しい人だった。
先生は昨日の夜私を唐突に呼び出してたった一言ごめんなさいと言った。泣きそうな声で何度も何度もごめんなさいと呟きながら私を強く抱きしめてくれた。けれどそれ以上にこの世界で生きて行く事がとても辛いのだと泣いた。この酷い世界に私を残して逝く事が辛いのだと言った。けれどそれ以上にもう息をする事さえも辛いのだと吐き捨てた。私は分かりましたと言っただけで別に止めようとはしなかった。小鳥の様にか細い先生が生きて行くにはこの世界は過酷過ぎる。だから先生の幸せの為にも彼の死を望んであげなければならないのだ。それに私が死ねばきっとまた会える。私みたいな人間は案外長生きしちゃうだろうからまだ何十年も先だけどそれまでお互いにきっと覚えていられると私は信じている。
「先生、私が殺してあげましょうか?」
私がそう言うと先生は一瞬だけ驚いたような表情を見せ、すぐにいつも見せてくれていたのと同じ穏やかな笑みをくれた。
「そうですねぇ……それは嬉しい事かもしれません、でも辛くはないのですか?」
「辛くなんてありません、むしろ嬉しいです。だって先生の最期に先生の為になる事が出来るんですよ? 何もせずにいるほうが先生だって辛いでしょ?」
きっとこの人は私の為に生き残る。きっと私を一人にする事に異常なまでの罪悪感を抱いていて、私のいろんな事を考えて考えて結局生き残ってしまうだろう。私がいる限り絶対に死ねはしない。先生は根本的に臆病な人間なのだ。私はこの人の生きる言い訳になりたくない。
「殺してあげます、綺麗に。頚動脈と心臓どっちがいいですか?」
「心臓をくりぬいて欲しいですね、そうすれば生き長らえる事もない」
「じゃあ心臓は貰っていきますね、大切にします」
先生さようなら、お別れのキスですよ。もう貴方が私の顔を見るなんて出来ないのだから、せめてこれだけでも覚えていてください。
誰かの為に人を殺したのは初めてだった。
先生は昨日の夜私を唐突に呼び出してたった一言ごめんなさいと言った。泣きそうな声で何度も何度もごめんなさいと呟きながら私を強く抱きしめてくれた。けれどそれ以上にこの世界で生きて行く事がとても辛いのだと泣いた。この酷い世界に私を残して逝く事が辛いのだと言った。けれどそれ以上にもう息をする事さえも辛いのだと吐き捨てた。私は分かりましたと言っただけで別に止めようとはしなかった。小鳥の様にか細い先生が生きて行くにはこの世界は過酷過ぎる。だから先生の幸せの為にも彼の死を望んであげなければならないのだ。それに私が死ねばきっとまた会える。私みたいな人間は案外長生きしちゃうだろうからまだ何十年も先だけどそれまでお互いにきっと覚えていられると私は信じている。
「先生、私が殺してあげましょうか?」
私がそう言うと先生は一瞬だけ驚いたような表情を見せ、すぐにいつも見せてくれていたのと同じ穏やかな笑みをくれた。
「そうですねぇ……それは嬉しい事かもしれません、でも辛くはないのですか?」
「辛くなんてありません、むしろ嬉しいです。だって先生の最期に先生の為になる事が出来るんですよ? 何もせずにいるほうが先生だって辛いでしょ?」
きっとこの人は私の為に生き残る。きっと私を一人にする事に異常なまでの罪悪感を抱いていて、私のいろんな事を考えて考えて結局生き残ってしまうだろう。私がいる限り絶対に死ねはしない。先生は根本的に臆病な人間なのだ。私はこの人の生きる言い訳になりたくない。
「殺してあげます、綺麗に。頚動脈と心臓どっちがいいですか?」
「心臓をくりぬいて欲しいですね、そうすれば生き長らえる事もない」
「じゃあ心臓は貰っていきますね、大切にします」
先生さようなら、お別れのキスですよ。もう貴方が私の顔を見るなんて出来ないのだから、せめてこれだけでも覚えていてください。
誰かの為に人を殺したのは初めてだった。
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