2008-03-28 [Fri]
「ねぇ、兄さん」
「何だ望」
「どうしても見合いで結婚しなければいけないのかな……?」
「いや、正直その必要はないって言うかこれは父上や倫が遊びたいだけだろう確実に。ところで望」
「何?」
「俺達も眼を合わせちゃいけないのか……?」
「多分って言うか絶対ダメだよ、私の前でヤンキー男が二人連れて行かれたし」
「背中合わせに喋るって言うのも微妙だな」
「仕方ないよ、後……何時間?」
「二時間」
「うわ微妙だ……気力が尽きそう」
「頑張れ望後少し。それにしても」
「それにしても?」
「今回はわりとまともに見合いの儀じゃないか?何かやたら女だらけだったような」
「言われてみれば……いつもはこんなにまともじゃないのに……まさか父様が本気で?」
「……いや、違う、倫だ」
「倫が?どうして」
「試してるんだろ、俺達の事」
「……試す」
「どれだけ俺達が本気なのか」
「……ああ」
「お前本当にあの娘の事好きか?」
「兄さんこそ。弟に喧嘩売るほど好きなの?」
「ああ好きだよこの丸眼鏡!」
「何だとやるかこの角眼鏡!」
「お前みたいにいちいち絶望して周りに迷惑かけるような奴に渡せるか!」
「お前こそ絶命って言われる度絶望してるじゃないか!!」
「黙れ!」
「言い出したのはお前だろ!?」
「……キリがない気がするな」
「……ないね」
「これだけは譲らないぞ望」
「こっちも譲る気ないよ兄さん」
「……あの娘倫に呼ばれて来てるんじゃないだろうか」
「多分来てるよ、絶対呼んでる、絶対監視カメラからニヤニヤしながら私達の様子を伺っているに違いありません!ああ、もう!絶望し」
「うるさい」
「何だ望」
「どうしても見合いで結婚しなければいけないのかな……?」
「いや、正直その必要はないって言うかこれは父上や倫が遊びたいだけだろう確実に。ところで望」
「何?」
「俺達も眼を合わせちゃいけないのか……?」
「多分って言うか絶対ダメだよ、私の前でヤンキー男が二人連れて行かれたし」
「背中合わせに喋るって言うのも微妙だな」
「仕方ないよ、後……何時間?」
「二時間」
「うわ微妙だ……気力が尽きそう」
「頑張れ望後少し。それにしても」
「それにしても?」
「今回はわりとまともに見合いの儀じゃないか?何かやたら女だらけだったような」
「言われてみれば……いつもはこんなにまともじゃないのに……まさか父様が本気で?」
「……いや、違う、倫だ」
「倫が?どうして」
「試してるんだろ、俺達の事」
「……試す」
「どれだけ俺達が本気なのか」
「……ああ」
「お前本当にあの娘の事好きか?」
「兄さんこそ。弟に喧嘩売るほど好きなの?」
「ああ好きだよこの丸眼鏡!」
「何だとやるかこの角眼鏡!」
「お前みたいにいちいち絶望して周りに迷惑かけるような奴に渡せるか!」
「お前こそ絶命って言われる度絶望してるじゃないか!!」
「黙れ!」
「言い出したのはお前だろ!?」
「……キリがない気がするな」
「……ないね」
「これだけは譲らないぞ望」
「こっちも譲る気ないよ兄さん」
「……あの娘倫に呼ばれて来てるんじゃないだろうか」
「多分来てるよ、絶対呼んでる、絶対監視カメラからニヤニヤしながら私達の様子を伺っているに違いありません!ああ、もう!絶望し」
「うるさい」
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2008-03-28 [Fri]
彼女が私の元を訪れたのは一週間程前の事だ。
その日はちょうど梅雨に入ったとのニュースキャスターの言葉を反映するように、酷い雨が地面を叩き続ける音だけが辺りを満たしていた。
彼女はその中を傘も差さずに歩いていた。
午後が休診だったので、確か木曜日だった、と思う。いつもなら夕焼けで痛いほど朱く染まるくらいの時間だろうか、診療所には私一人だった。
いつもこの時間には鍵をかけているはずの扉が開く音がしたので診察室を出て様子を伺うと、入り口にずぶ濡れになった彼女が立っていた。
「こんにちは絶命先生、とりあえずタオルを貸していただけますか?」
ずぶ濡れになった身体で彼女は笑っていた。
そのときから妙な違和感を感じていなかったと言えば嘘になる。ただそれがいつもの彼女のブラフなのかそれとも本当に何か起こっていたのか判断材料が一切なかったせいだ、それも言い訳なのだが、そのせいで私は気のせいと思い込む事にした。
その日から毎日、彼女が訪れるようになった。
どうせ暇なのだし、迷惑だなんて思ってもいないので追い返す理由もなく、いつの間にか茶飲み友達のようになって他愛もない話をして。
次の日も。
次の日も。
会えば会う程、違和感が少しずつ大きくなって行った。
そして、珍しく雨の降らない、乾ききった晴れの日だった。
「絶命先生、私、先生の事好きですよ?」
鬱陶しいほどに叫んでいる蝉達に混じって、乾ききった声色で彼女は言った。それがあまりに白々しい嘘のように聞こえたので、思わず私は笑ってしまった。
「望じゃなくて?」
「もちろんです。どうしてここに絶望先生が出てくるんですか」
「貴女の先生は望でしょう。それよりどうして私、ですか?」
「だって先生は優しいし、大人だし、綺麗だし、それに何より」
診察台に腰掛けていた彼女は立ち上がり、私の眼の前に立ったと思うと、私の首に自らの腕を絡めて、そのまま、唇を。
「私の事好きでしょ?」
耳元で囁いた彼女の声は妙に大人びた色香を放っていて、目の前にいるのが本当に彼女なのか疑いたくなる。
「綺麗な顔ですねぇ、二人ともよく似てる」
そう言って泣きそうに笑いながら私の輪郭を白い指でなぞっていく。私はそれを遮る様にその手を取った。夏前なのにやたらと冷えた手が痛かった。
「好きですよ」
「私もですよ」
本当に愛しい。取った白い手に口付けながら思わず口からこぼれた。
「愛していますよ」
「そうですか」
「抱きしめてもいいですか?」
「いいですよ」
「やっぱり泣いていたんですね」
何か言いたげな彼女を遮って腕の中に押し込めた。
何故あの日に限って雨が降っていたのか。
何故あの日に限って鍵をかけ忘れてしまったのか。
何故この日に限って私は自分を抑え切れなかったのか。
君は私を通して誰を見ている?私によく似た、あの男を見ているのだろう?
ああ、知っているよ、君が、私など。
愛していない事なんて。
その日はちょうど梅雨に入ったとのニュースキャスターの言葉を反映するように、酷い雨が地面を叩き続ける音だけが辺りを満たしていた。
彼女はその中を傘も差さずに歩いていた。
午後が休診だったので、確か木曜日だった、と思う。いつもなら夕焼けで痛いほど朱く染まるくらいの時間だろうか、診療所には私一人だった。
いつもこの時間には鍵をかけているはずの扉が開く音がしたので診察室を出て様子を伺うと、入り口にずぶ濡れになった彼女が立っていた。
「こんにちは絶命先生、とりあえずタオルを貸していただけますか?」
ずぶ濡れになった身体で彼女は笑っていた。
そのときから妙な違和感を感じていなかったと言えば嘘になる。ただそれがいつもの彼女のブラフなのかそれとも本当に何か起こっていたのか判断材料が一切なかったせいだ、それも言い訳なのだが、そのせいで私は気のせいと思い込む事にした。
その日から毎日、彼女が訪れるようになった。
どうせ暇なのだし、迷惑だなんて思ってもいないので追い返す理由もなく、いつの間にか茶飲み友達のようになって他愛もない話をして。
次の日も。
次の日も。
会えば会う程、違和感が少しずつ大きくなって行った。
そして、珍しく雨の降らない、乾ききった晴れの日だった。
「絶命先生、私、先生の事好きですよ?」
鬱陶しいほどに叫んでいる蝉達に混じって、乾ききった声色で彼女は言った。それがあまりに白々しい嘘のように聞こえたので、思わず私は笑ってしまった。
「望じゃなくて?」
「もちろんです。どうしてここに絶望先生が出てくるんですか」
「貴女の先生は望でしょう。それよりどうして私、ですか?」
「だって先生は優しいし、大人だし、綺麗だし、それに何より」
診察台に腰掛けていた彼女は立ち上がり、私の眼の前に立ったと思うと、私の首に自らの腕を絡めて、そのまま、唇を。
「私の事好きでしょ?」
耳元で囁いた彼女の声は妙に大人びた色香を放っていて、目の前にいるのが本当に彼女なのか疑いたくなる。
「綺麗な顔ですねぇ、二人ともよく似てる」
そう言って泣きそうに笑いながら私の輪郭を白い指でなぞっていく。私はそれを遮る様にその手を取った。夏前なのにやたらと冷えた手が痛かった。
「好きですよ」
「私もですよ」
本当に愛しい。取った白い手に口付けながら思わず口からこぼれた。
「愛していますよ」
「そうですか」
「抱きしめてもいいですか?」
「いいですよ」
「やっぱり泣いていたんですね」
何か言いたげな彼女を遮って腕の中に押し込めた。
何故あの日に限って雨が降っていたのか。
何故あの日に限って鍵をかけ忘れてしまったのか。
何故この日に限って私は自分を抑え切れなかったのか。
君は私を通して誰を見ている?私によく似た、あの男を見ているのだろう?
ああ、知っているよ、君が、私など。
愛していない事なんて。
2008-03-28 [Fri]
酒を飲んだ次の日は90%お腹を壊しますつきのです。飲みすぎ食べすぎいけませんね。ちなみに酒には強いほうなので二日酔いはした事ありません。記憶も飛びません。
高校時の部活メンバーで集まって飲んでいたんですが、一人だけ青とか緑とか変な色のばっか飲んでました。先輩にブルー○ットぽいとか言われたよ……!何でカクテルのバナナって緑色いんでしょうね。
実は隠れて命兄さん萌えです。基本大人の魅力を感じる人に萌えるのです。……ん、大人?うん、大人。ちょっと心の弱い大人。
もう確実に彼は弟を助けるために医者になったんですよね!んで守るぞ!って意気込んでるのに可符香ちゃんが現れて何となく寂しくなってしまってればいい……!命先生vs可符香ちゃんですね!
あ、でも糸色兄弟で可符香ちゃん取り合ってくれてもいいなぁ。そこに久藤君が絡んで来たらなおよし。
今のところ望カフ≧命カフ=命望>准カフくらいの意欲なので……お題でまぁ消化します。
そういえば地元のコミケに参加しそうです。まだいつになるかは分かりませんが。
友と参加するのでジャンルは絶望じゃなくて戦国になりそうです。全員共通してるのがBASARAともやしもんくらいしかないという絶妙先生な感じ。
イラストが描けない私は、頑張るしか、ない……!
拍手返信
25日22時17分 もしかして~の方
久藤君ではありません(笑)
私は童話を作ると本当に怖すぎるグリム童話ばりの内容になってしまいますよ……いたぁい。
楽しみにしてくださっているということで、本当に嬉しいです、これからも頑張ります!
高校時の部活メンバーで集まって飲んでいたんですが、一人だけ青とか緑とか変な色のばっか飲んでました。先輩にブルー○ットぽいとか言われたよ……!何でカクテルのバナナって緑色いんでしょうね。
実は隠れて命兄さん萌えです。基本大人の魅力を感じる人に萌えるのです。……ん、大人?うん、大人。ちょっと心の弱い大人。
もう確実に彼は弟を助けるために医者になったんですよね!んで守るぞ!って意気込んでるのに可符香ちゃんが現れて何となく寂しくなってしまってればいい……!命先生vs可符香ちゃんですね!
あ、でも糸色兄弟で可符香ちゃん取り合ってくれてもいいなぁ。そこに久藤君が絡んで来たらなおよし。
今のところ望カフ≧命カフ=命望>准カフくらいの意欲なので……お題でまぁ消化します。
そういえば地元のコミケに参加しそうです。まだいつになるかは分かりませんが。
友と参加するのでジャンルは絶望じゃなくて戦国になりそうです。全員共通してるのがBASARAともやしもんくらいしかないという絶妙先生な感じ。
イラストが描けない私は、頑張るしか、ない……!
拍手返信
25日22時17分 もしかして~の方
久藤君ではありません(笑)
私は童話を作ると本当に怖すぎるグリム童話ばりの内容になってしまいますよ……いたぁい。
楽しみにしてくださっているということで、本当に嬉しいです、これからも頑張ります!
2008-03-25 [Tue]
お題始めてみます。
望カフは素晴らしいですね!
隣の女子大生に扮して先生を裏から落とそうとする可符香が可愛くてたまりません。
もうさっさとくっついちゃえばいいのにもうマジで……!
でもちょっと命カフとか駄目ですか?有りですか?無しですか?
久藤君も好きなんですよねぇ……(殴
あ、どうやら拍手を下さった方がいらっしゃるようで。本当にありがとうございます。。
望カフは素晴らしいですね!
隣の女子大生に扮して先生を裏から落とそうとする可符香が可愛くてたまりません。
もうさっさとくっついちゃえばいいのにもうマジで……!
でもちょっと命カフとか駄目ですか?有りですか?無しですか?
久藤君も好きなんですよねぇ……(殴
あ、どうやら拍手を下さった方がいらっしゃるようで。本当にありがとうございます。。
2008-03-25 [Tue]
私達は、逃げた。
ただ彼が二人で逃げようと言ったから、逃げ出した。
私は彼に行き先を訊ねた。
彼は何処でも良いと答えた。
私も何処でも良いと言った。
何処へ逃げましょうか、と彼は笑った。
私は知っている。
彼の鞄の中に、通気性の良いガムテープも、酸素を使わず燃える練炭も無い事を。
その代わりに、通気性の悪いガムテープと、酸素を使って燃える練炭がある事も、知っている。
行きたい場所は有りますか、と彼は訊ねた。
貴方と一緒なら何処でも良いです、と私は答えた。
じゃあ取り敢えず、この街から出ましょうか、と彼は笑った。
何から逃げるんですか、と、訊ね
られなかった。
ただ彼が二人で逃げようと言ったから、逃げ出した。
私は彼に行き先を訊ねた。
彼は何処でも良いと答えた。
私も何処でも良いと言った。
何処へ逃げましょうか、と彼は笑った。
私は知っている。
彼の鞄の中に、通気性の良いガムテープも、酸素を使わず燃える練炭も無い事を。
その代わりに、通気性の悪いガムテープと、酸素を使って燃える練炭がある事も、知っている。
行きたい場所は有りますか、と彼は訊ねた。
貴方と一緒なら何処でも良いです、と私は答えた。
じゃあ取り敢えず、この街から出ましょうか、と彼は笑った。
何から逃げるんですか、と、訊ね
られなかった。