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世界の果てで枯れ果てた
先生と浦原さんと、あとオヤジ。
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2025-05-15 [Thu]
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2009-03-22 [Sun]
さて現在午後八時。夕食後のまったりタイムでございます。いつもならテレビを見て二人でほのぼのしたり時には喧嘩をしてガラスが割れたりしてる頃ですが今日は違います。
うふふ、うふふ、愛しのダーリンが無防備にもソファーで居眠りですよ、かーわいい!市販の睡眠薬ってバッチリ効くんですね、愛用しますこれ。
さて時は遡り三日前、最近仕事が忙しいらしいダーリンがぽつりと漏らした一言が始まりでした。

最近眠れないんだよねぇ…

oh!
何と言うことでしょう、私より大事なその身体、完璧に体調管理が出来ていると思っていたのにまさかの不眠症!気が遠くなりました、だってダーリンは私と一緒に暮らし始めてからというもの風邪の一つひいたことがありませんのよ!
とにかくショックでした、ダメな妻です、時代が違えば「みくだりはん」を突きつけられてもおかしくありませんどうしましょどうしましょ、報知器なんて我が家にありませんわ!
そこで無力な妻は睡眠薬というものに手を出してしまったわけです。それにしてもこんなに効くとは……恐ろしき薬効成分。さてさてこのままでは冷えて風邪をひいてしまうわ、毛布でもかけてそっとしておいてあげるのが妻の役目ってもんです!
それにしても。かーわいいなー。何てかわいいんでしょうちのダーリン。他の男じゃかないっこないもんね!きゃあきゃあ子供みたい!今ちょっと動いた!素敵!かわいい!
もう仕方ないもん、私だって隣で眠ってやるぅ。どっちが先に起きるかな、うっかり朝まで寝ちゃったりしないかな、そしたら怒るんだろな。でもいいもん、幸せだもん。
素敵ライフ!し あ わ せ !
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2009-01-26 [Mon]
まるで水面だった。深い闇に立つ少女の足元がそうであると同時に、少女自身がおそらくそのものであった。
足を踏み入れる。幾つかの波紋。少女の瞳が僕を捕らえる。そこにあるのはただ明確な拒絶だった。
生きているとも死んでいるとも判別のつかない少女を揺らさないように慎重に歩を進めて行く。僅かに水面が騒ぐ度に綺麗な顔の向こうが歪んだ。
手に触れてみた。冷たい。呼吸はしているのに心音がどこにも見当たらない。少女の身体はいとも簡単に僕を受け入れた。
生きているのかと訊ねれば分からないと首を振る。僕の心音が酷く煩かった。
生きたいのかと訊ねれば黙って首を横に降った。もしも生と死を天秤にかけれるのならば死を選びたいのだと少女は言う。何処かで酷く水面が揺らいでいた。
幸福を否定する人間からの幸せは享受できないのだと話す。次第に呼吸がなくなってきた。
よく見れば水面の端で幾人もが無神経に彼女に触れていた。揺らぐ。揺らめく。彼女が揺れる。
苦しいと彼女は言った。
2008-11-25 [Tue]
 お帰りなさい、あなた。お疲れでしょう? 早く上がって、ほらコートはこっちにかけておくから早く脱いで。ああ、ご飯ならもう出来てるわよ、お風呂も沸かしてあるけどどっちが先がいい?

 私の準備も出来てるけど、どうする?





「―――という夢を見た」
 珍しく自分から起き出した同居人の朝一番の台詞だった。私は思わずインスタントコーヒーにお湯を注ごうとポットを構えた手を止めて同居人を凝視してしまった。
「……馬鹿?」
「いやあれはちょっと男のロマンというか」
「何言って欲しいの? ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
「まあとりあえずお前を喰うよね」
「もう若くないんだから無理しなくても」
「ていうか俺帰って来ても大体飯出来てないし」
「だって私が作るより美味しいんだもん」
「風呂だって基本シャワーだし」
「それ私に言われても困る」
 年齢不詳の同居人(三十路手前くらいだと推測するが若作りの可能性が高いような気がする)はわざとらしく大きな溜息をついてリビングのソファーにどさりと倒れこんだ。くすんだ白色のそれがぎしりと悲鳴を上げる。私は未だ熱を持ったままのポットから色違いのマグカップにそれぞれお湯を注ぐと、砂糖が切れていることに気が付いて手元の引き出しを開いた。
「夢の中のお前はめっちゃくちゃいい奥さんって感じで」
「人を勝手に嫁にするな」
「すっごい優しくて」
「私の半分は優しさで出来てるはずだけど」
「しかも裸エプロンで」
「うん、もうどうしようもないと思う」
 白のマグカップに砂糖を一杯とミルクをたっぷり、黒い方には何も手を加えずに片手でそれぞれ取っ手を持ってリビングまで持ち運ぶ。寝転がったままの彼をうまく避けるようにソファーに腰を下ろすと、目の前のローテーブルにカップをことりと置いた。
「でも現実は……」
「悪かったな煩悩の塊」
「百八の中の四つって可愛いもんだろ」
「またえらい濃い四つが出て来たものですね」
「今日の夜エプロン着せちゃダメ?」
「丁重にお断りします」
 朝から何なんだろうこの会話。勝手に卑猥な夫婦の営みに巻き込まれた私はいい迷惑だ。道具(まだ使ったことはないけれど引き出しの奥のほうにいっぱい持ってるのを知っている。これからも出て来ないことを切に祈る)もそうだがコスプレやらエプロンやらは勘弁して欲しい。普通の女の子って彼氏の性癖に何処まで対応できるの?
「あれ、お前昔は何されても平気とか言ってなかった?」
「……そういえば。人って変わるもんね」
「うっわ普通になる前に着せとけばよかった」
「死んでしまえ」
2008-09-30 [Tue]
 お仕事だそうだ。
 顔を洗ってる間にフライパンに卵を落としてパンをトースターに放り込んで、え、シャツ?知らないよクローゼットじゃないの?あ?無い?じゃあ多分そっちにかかってんじゃないの自分の事くらいちゃんとしてよもー。
 目玉が焼けた頃に黒いカジュアルスーツが奥から出てきた。ハイこれとりあえずトーストと卵。いただきます。えーハムエッグとか言わないでよめんどくさい、ハムなら冷蔵庫に……ごめんないや、帰りに買って来て。サラダも欲しいからレタスもよろしくね。
 はいほら、時間、遅れてもいいとか言わないの!あれ持った?何さ母親みたいって私のが年下なのに、さっさと行けよばかー。

 いってらっしゃい。

 ふう。
 私がこの部屋で暮らすようになって早二ヶ月が経った。あの男がちゃんとした仕事に出かけるのはせいぜい週に一度くらいで、慣れていないせいか当日の朝は悲しいくらいに慌ててしまう。ぶっちゃけいい歳なんだから身の回りくらいちゃんとして欲しいんだけどああ……無理だろうな。仕方ないから置いてもらってる恩もある私がちょっとだけ手伝う。扉から出て行くのを見送って鍵とチェーンをかければミッション・コンプリート。
 ……ていうか何で私恋人みたいな事してるんだろう違うのに。そんな事実一切無いのに。これは同居であって同棲でなく、キスもすればセックスもするけどいってらっしゃいのキスなんてした事ないし子供を作る気なんてさらさら無い。じゃあ何でそんな事するのかというとただ流れでそうなっただけであって、まあ超が付くくらい健康な男とこれまた健康な女が密室にいればまぁ確実に……八割くらいは、そういう事になっても、おかしくないと、思うよ?

 それはそれとして。

 まあ適度にゲームをしていればあっという間に夜がやって来ますね!同居人は腹が減りました家主。ハムもレタスも帰って来ないまま既に十二時間以上が経過していた。昼飯はチキンラーメン。おいしゅうございました。しかし何故この家には専用鍋があるのだろう。
 とか何とか言ってますが同居人、ゲームに飽きました。チャンネルを変えましょう……お、ニュースの時間ですね。おやおやどうやら仕事も上手くいったみたいで……後始末がすんなり済めばそろそろ帰ってくる頃じゃないかなぁ。

 あ。

 おかえりー。仕事上手くいったみたいだねー。あーうんそうそうニュース見たの。しかしそんなに飛行場って死角があるものなのかね?へー……知恵というのは怖いなぁ、そんな所でそんな風に。え、一人だけじゃないの?二人?もう一人は?わー飛行機でそんな所に……惨い事するね。
 とりあえず腹減ったんで晩飯お願いできますかハムレタス。貴方は今日からハムレタス。へ?いや何も忘れてませんよ?何?は?

 おかえりのキス?

 貴様空港から外国に飛び立ってしまえ。
2008-09-25 [Thu]
眠れない理由?そんなの聞かれて答えられない人間なんているわけ?ああ、いるんだ、へー。初めてそんな馬鹿がいるなんて知ったよ。世間のレベルは低いもんだね。
私は頭がいいからさ、初めて眠れなくなったその日の事も全部全部重箱の隅の埃まで忘れろと言われてもきっちり覚えている。初めて眠れなくなったのが五年前の事、夏の真ん中の日からきっちり二週間。それからその次の年、六日眠れない日が続くと一日はぐっすり眠れる。何で私こんなところで几帳面なんだろう。
それから何回も眠れない日々を繰り返し、今度は不定期で理不尽な不眠の世界が受け入れてくれた。何なんだ一体、マジで、こいつ。
「何か文句でも」
「ありません」
あーしまった顔に出てた。とりあえず言いませんが文句なら山の様にあります。まず腰が痛いとか足が痛いとか体だるいとか三回はないだろうとか眠いとか眠いとか眠いとか。
「悪い?」
あーまた顔に出てましたか私。まあいいや事実事実。悪いのはアンタ。
「今日は機嫌が悪いね、俺何かした?」
そう言ってベッドに転がったままくわえた煙草に火をつける。火事になる火事に。
「はい寝煙草禁止ー」
「うるせぇな返せよ」
「いーやー」
ほら、もうシーツの端がこげちゃってるでしょー。これ燃えたらどうするのー。
「気になって眠れやしない」
嫌だって言っても全然聞いてくれないしなぁこの人。
「それは何が?俺が?煙草が?家事か?」
「だから何」
「忘れろって言ってんの」
「だから何を」
私頭が悪いからこの人が何を言ってるのか分かんない。私に忘れるべき物なんて何一つないのに。
「……今日はもう寝ろ」
「眠れないの」
「睡眠薬と意識を飛ばすのとどっちがいい?」
一体この男は優しいのか利己的なのか、今の私にはよく分からない。私は彼の胸に顔を埋めて眼を閉じた。
「どっちも嫌だなぁ」
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